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2008/01/01

落穂ひろい(17)最近のアート事情

  今日ほど美術館が一般大衆に親しまれた時代はかつてなかっただろう。詳細な統計的数字は持ち合わせないが、実感としてここ十数年の間にわが国の美術館は確実に増え続けており、それに伴って美術愛好家も増えている。このような現象は全国にひろがり、大都会だけではなく地方の中小都市でも実感することができる。

 まず、国立美術館や地方自治体による公立美術館の拡充が美術愛好家の増加を誘発することはまちがいない。加えて個別企業の運営による美術館がある。これらの美術館も規模は比較的小さいものの高水準の特徴的な企画展を展開している。百貨店が併設するギャラリーも然り。

 それだけではない。山間の田舎町をドライブしていて、予期しないところにこじんまりとした心地よい美術館に出くわすことがある。たまたま訪れた観光地で高質の個性的な美術館を発見することもある。それは温泉街であったり、高原や山間の一角であったりする。彫刻や立体展示を見せる野外美術館も少なくない。

 美術館の増加、普及にともなって、美術を鑑賞する人の数も飛躍的に増えつつあるようだ。従来、美術館は美術愛好家という限られた人々のものであった。今はどうだろうか。一言でいうならば老若男女のいずれもが美術(作品としての狭義の美術品と言うよりは、状況・環境としてのアート)を鑑賞するようになった。人々は、街のレストランで食事をしたり、カフェでコーヒーを飲んだりするような感覚でアートを鑑賞するようになった。美術鑑賞の日常化、大衆化である。

 当然ながら、人々のアートに対する感覚は千差万別である。好き嫌いがはっきりしている。日本画・洋画、彫刻・版画・書、工芸、テキスタイル、写真・CG、建築、オブジェ、具象・抽象、古美術・現代美術、平面・立体、そして音響・音楽さえも好きなものは何でも、何時でも、何処でも楽しむのが現代流のアートの楽しみ方なのである。若者達はいうまでもなく、中高年者も、男も女もみんなそれなりの美術評論家になる。異論もあるかも知れないがこのようなアートの楽しみ方と日常化、大衆化は、大いに歓迎すべきであろう。

 それにしても、美術館の入館料、もう少し何とかならないものか。特に国公立美術館の入場料は極力押さえてもらいたい。欧米では、無料や心持ち程度というのも多く、有料の場合でも日本と比べて安いか、曜日によっては無料とする美術館も多い。近年は常設展についてはシニア(60歳以上)は無料というのもあるが、高齢者の入館者が増えている事情を考えるとこれはありがたいことである。

*本編・国際芸術見本市(ジャパン・アート・フェスティバル)始末記の「あらすじ」は下記サイトからどうぞ:http://gastrocamera.cocolog-nifty.com/blog/

Img589_3 第1回ジャパン・アート・フェスティバルカタログ(制作:原弘氏、表紙デザイン:粟津潔氏)

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コメント

こんばんは。
このたびはTBありがとうございました。
日付の一番近かった落穂ひろいにTBさせていただきました。

ジャパン・アートフェスティバル、存じ上げませんでした。出品者を見ましたが、素人の私でもわかるくらい豪華な顔ぶれ…
ゆっくり読みたいので、また来させていただきます。

はじめまして。はじめたばかりの拙い記事にトラックバックをありがとうございました。

keyさんのように内容の濃いブログを目指したいと思います。取り急ぎお礼まで。

はじめまして、ならぢゅん と申します。

さて先日は「矮猫亭日乗」にトラックバックを頂き有難うございました。振り返ってみますと、昨年、美術館に足を運んだのは国立西洋美術館(常設展)と出光美術館(仙涯展)の2回だけでした。今年は年初から森美術館(六本木クロッシング2007展)に行くことができ幸先のよいスタート。美術を楽しむという面でも佳い一年にしたいものです。

では、また。取急ぎ御礼まで。

はじめまして。
トラックバックありがとうございます! 
でも実はその仕組みがよくわかっていないのですが、どこからお越し頂けたのかなぁ・・と思いつつ、そんなことよりもこちらの内容の濃さに、感激、興奮しております!
ゆっくりじっくり拝見したいと思います。

遅ればせながらお礼まで。。


はじめまして、TBありがとうございます。

地方に住んでいると、よい作品も来ないので、東京などまで見に行かなくちゃならないので、行くと数十カ所回ってくる事になるので、入場料だけでも数万円かかってしまいます。入場料はほんとどうにかならないものかと思います。
keyさんのブログ読み応えあるので、少しずつ読ませていただきます。

TBありがとうございました。

これからも、色んな展示会に足を運んでみたいと思います。

値段以上に有意義な時間が過ごせる空間であるのは間違いのないところなんですけど、入館料はもっと安くして欲しいものです・・・。

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