第二部 国際芸術見本市始末記・サンフランシスコ展(1)
1月5日(木) (東京~サンフランシスコ)
鳴るはずの目覚まし時計が鳴らず、六時過ぎに慌てて飛び起きる。
世津子、英明と三人で羽田空港へ駆けつける。青柳、風間両氏の見送りで、午前十時JAL002便で発つ。帰途とは違い風向きの関係でホノルルまでの飛行時間はわずか六時間十五分。機内で吉瀬(友人)へハガキを書く(スチュワーデスに投函を依頼)。
現地時間の一月四日午後九時十五分にホノルル空港に到着。いつものコーヒーハウスに入ったりして、空港ターミナルで二時間近くを過ごす。空港で友人宛に絵ハガキを投函する。
午後十一時十五分にサンフランシスコに向けて飛び立つ予定。日本時間では、未だ午後五時半なのに、どうも真夜中のような気がする。時間はどのように人の心理状態に影響を及ぼすのだろうか。
・またもや作品の損傷事故
1月5日(木)(サンフランシスコ)快晴、
午前五時四十五分にサンフランシスコ空港に到着。直ちにべバリープラザホテルへ向う。八時にはホテル自室に落ち着きすぐベッドに入る。あまり眠ったような気はしないが正午過ぎまで床にいた。午後、階下の「みどり」でうどん一杯を食べる。あまり食欲はない。
午後、ゴールデンゲートパークのデ・ヤング美術館へ向う。会場は展示準備作業中であった。
・ 大型作品岡部繁夫「作品U」が完全に破損! 肉厚の絵具が所々で抉り取られて無残な姿! シカゴ美術館での梱包上の不備によるものに違いない。いかに対処すべきや?
・ ケータリングサービスのMr. Von Lowenfeldtに電話を入れる。レセプションは、二〇〇〇ドルではおそらく無理ではないかとのこと。
その他種々解決すべき問題が残る。暖かいのでコートは終日不要であった。
・慢性的不眠症に悩まされる
夜は風呂を浴びて床に入るが、容易に寝付かれず、挙句の果てに例のゴミ収集車(?)の騒音にも悩まされ、朝の六時近くまで苦闘する。三島由紀夫「宴のあと」を読み終える。九時までの二時間ばかりウトウトしたにすぎない。
1月6日(金) 晴
さすがに頭は朦朧として、自分の身体か他人の身体か判らない位。時間的感覚も麻痺して、東京を出たのがとても昨日のこととは思えないくらいだ。思い切って九時半に起床。暖かい。気力を振り絞ってあちこち電話を掛けまくる。
・ 総領事館(車借り上げを依頼する。)
・ デ・ヤング美術館(作品販売の件で、保険代理業のデユトロ氏にアポイントメントを取ってくれるように依頼する。)
・ トプリス&ハーディング社(破損作品について至急の損害査定を要請。千代田火災保険宛への報告書作成も依頼する)
午前十一時にウー氏(アジアティック・フォーワーダーズのスタッフ)と会い、岡部作品の開梱時の状態について詳しく尋ねる。
十二時半にサンフランシスコ空港へ山田智三郎氏を迎えに行くが行き違いとなる。急いでセントフランシスホテルに戻り、無事に合流することができた。午後四時に山田教授と一緒に美術館へ行き展示会場の作業を見る。六時にホテルに戻り夕食。
夜半に目が覚める。午前一時であった。しかたなく北杜夫「白きたおやかな峰」を読む。また例の騒音。そしてウトウト。午前六時になってしまった。
1月7日(土) 快晴
次に目を覚ませば、すでに午前十一時! 朝食後美術館へ行く。暖かい。
美術館で、山田教授から画家の三上隆彦氏とその夫人を紹介される。保険代理業のデユトロ氏に作品価格表を手渡す。
午後は落ち着いた気分でブランデージ・コレクション(サンフランシスコ・アジア美術館)を見て回る。その後ゴールデンゲートパークを散策する。まさに春の陽気だった。バスでダウンタウンへ戻る。
夕刻、山田先生、三上画伯ご夫妻と共にチャイナタウンで食事をする。午後九時、ホテルに帰着。風呂を浴びてから就寝。
1月8日(日) 晴
昨夜は週末のせいか例の騒音もなく、久しぶりによく眠れた。十時半に起床。階下食堂「みどり」は休業なので、ホテル向かい側の「松屋」で朝食。今日は為すべきこともなし。世津子へ手紙を書いてから、サンフランシスコ近郊のバスツアーを思いつく。
徒歩でヒルトンホテルまで行き、そこからグレイラインの大型バスで午後二時出発。乗客は例により米本土各地域からのアメリカ人ばかり。すでに現役を退いたらしい老夫婦が多い。バスターミナル~(オークランド・ベイブリッジ)~オークランド~バークレイ~カリフォルニア大学~(ベイブリッジ)~サンフランシスコと回る。大学キャンパスはいつ見ても気持ちが休まる(午後五時四〇分帰着)。降車時に皆で一ドルずつの献金をして、チップとしてドライバーに渡す。超大型バスを取り回しながら、素晴らしい話術でガイドとして最後まで喋りまくって乗客を楽しませる才能には、一ドルでは安過ぎる位だ。
再び「松屋」で夕食。
・サンフランシスコ展オープニングレセプション
1月9日(月) 晴
午前九時、ユニオンスクエアのセントフランシスホテルへ行く。山田智三郎教授と合流。関係者へのギフトを車で日本アートセンター(Japanese Art Center)の三上隆彦画伯のところまで運び、しかるべく包装をお願いする。ついでに漢字で「現代日本美術」との箱書きも依頼する。
デ・ヤング美術館へ行く。昼食には山田先生と付近の水族館まで徒歩で行く。午後は工芸品のディスプレー作業を手伝う。
裏千家の早崎氏(京都・今日庵渉外部長)に会い、茶道実演についての打ち合わせをする。午後四時、島岡氏の車でセントフランシスホテルへ山田教授を送り、一旦ホテル自室に戻る。
午後五時より美術館でオープニング・レセプションが開催される。ヤマト・レストランによるケータリングサービス。レセプションの出足はよく、まずは大成功だ!
レセプションのあと、三上画伯ご夫妻に招かれて山田先生と四人でアルメニア料理店へ行く。シシカバブ、オマールえびが美味い。バラの花のジャムは印象的。オペラチックエンタテインメントなるショーを観る(今となってはどの様なものであったのかは全く思い出せない)。
午後十時にホテルに帰着。とにかく睡眠を十分にとって消耗した体力を回復しなければならない。
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